深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

拡がる世界を体験する子どもたちが描かれる『げんきなマドレーヌ』

春のイメージカラーは、桜のうすいピンクと黄色。 黄色は菜の花やレンギョウ、ラッパスイセン、 ワーッと咲きほこる姿が印象に残ります。

新学期を迎える子どもたちにも 明るい色は元気のでる色です。

大きな絵本で教室で30名を前に開いても見劣りしない大きさです。

女の子たちの並んで歩く姿の愛らしさは1年生に重なり、 入学する時に読んでほしい絵本です。

子どもたちに読む大人も、 書き込まれたフランスの風景を楽しめますよ。

ルードウィッヒ・ベーメルマンンス 作

瀬田貞二 訳

ページ: 48

サイズ: 30.8x22.8cm

出版社: 福音館書店

出版年: 1972年

色の持つ力が自然と伝わる

背景がカラーページ以外は、いつも黄色、イエローが使われています。

色の力でしょうか、黄色は元気がでる色。 春、いろんな始まりを迎える季節に、タイトルどおり元気をもらえる絵本です。

絵本の舞台はフランス。 一緒に暮らす12人の女の子たちが元気な姿で街中を闊歩していて爽快。 マドレーヌは一番のおちびさんで、 12人の面倒をみてくれるのが、ミス・クラベルです。 不思議にこのふたりのほか、名前が登場しません。 こうすることで、誰もがマドレーヌとしての視線をもてるように思います。

 

拡がっていく世界の元になる場所

気のあう仲間と、食べて、眠って、散歩して、遊んで、励ましあって。 絵本のマドレーヌは何歳でしょう。 親元を離れて暮らしている彼女たちにとって 仲間とミス・クラベル(先生)が世界のすべてです。

子どもたちにとって世界は少しづつ広がっていくものです。 家の中、家の周り、町内、学校のまわり、市内へと。

マドレーヌの話を読んでいると、 仲間と町に出て自らの世界を広げていく様子がよくわかります。

子どもの頃は知らない町や場所に行く場所に、 少しのおそれを感じていたように思います。

なんだか小学1年生をみるように感じてしまいました。

読む時期や環境が変わると、また感じ方も変わるものだと、つくづく思います。

絵画的な絵とアニメーション的な絵

絵本にしては地味なおさえた色彩が使われていますし、 暗い色調で鬱蒼とした感じ。

はじめて読んだときは、絵の巧みさには驚きました。 フランスの名所が描かれているのですが、絵画をみるようです。

ところが、景色を描いた絵の中に、マドレーヌたちをみつけると、 はめ込まれたアニメーションのようにも見え、 不思議とそこがパーッと浮き立つよう。 服のラインが鋭角的で12人の女の子たちが動くと、

場面にスピード感が生まれるようです。 パースの取り方が上手いのでしょうか。
マドレーヌたちの姿はむしろ記号化されたようなかわいらしさです。 ページ構成がカラーの絵画的ページとイエローと線のページで、 ランダムにあらわれることで、読んでいてもリズミカル。

マドレーヌはシリーズになっていますが、 描かれる人物もとてもチャーミングです。 ミス・クラベルはもちろん看護婦さんやおまわりさん。

エッフェル塔、オペラ座、リュクサンブール公園など フランスの名所が美しく描かれており、 マドレーヌシリーズ、みていると、フランスに行きたくなりますね。

ご訪問ありがとうございます。 絵本選びのきっかけになればうれしいです。