深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

冬と雪の絵本『はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー』働くことはどういうことか

冬になると決まって読む絵本がありました。

鮮やかな緑のがかった水色と ピンクのひらがなでタイトル「けいてぃー」とかかれた絵本です。

 

表紙には電信柱がたくさん描かれ それが青に縁どられた額縁のようになっていて 真っ白な背景に真っ赤な除雪車が描いてあります。

 

主人公のけいてぃーです。

 

小学校の3年生くらいまでの子どもたちに よく読みました。

 

ここは雪国。

 

除雪車は見慣れたものですが、 絵本の除雪車のチャーミングなこと!!

 

その活躍とともに、笑顔になれる絵本です。

 

はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー

 

バージニア・リー・バートン 文/絵 いしいももこ 訳

ページ: 40ページ

サイズ: 24.6x22.6

出版社: 福音館書店

出版年: 1978年  

 バートンさんの遊び心

作者のバートンさんは「せいめいのれきし」や「ちいさいおうち」、 「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」など描いたアメリカを代表する絵本作家です。
この絵本にはちょっとした仕掛けがあります。
 
ページを2枚めくると
けいてぃー、
「ちいさなおうち」のおうち、
「名馬キャリコ」のキャリコ、
「マイクマリガンとスチームショベル」のショベルカー、
「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」のちゅうちゅう、
が描かれています。
 
すべてバートンさんが手がけた絵本ですが、 彼女の遊び心が垣間見えますね。
 
そのおはなしの構成力、絵のデザイン性、場面の使い方など どれをとっても、ため息がでるほど素敵です。
とくにこの「けいてぃー」は、とても色鮮やかです。
灰色に包まれる雪国に暮らす子どもたちには 明るい雪の表現が、目に新しく映るのではないかしら、 と読むたびに思いました。

 

擬人化された除雪車の活躍ぶりを描く

絵をみてワクワクできるっていいですよね。
真っ赤なけいてぃーの機能が 冒頭からきちんと解説されます。
 
けいてぃーは、きゃたぴらの ついている、あかい りっぱな とらくたーです。とても つよくて、 おおきくて、いろいろな しごとが できました。
けいてぃーには、いろいろな ぶぶんひんが ついていました。ぶるとーざーを つけると、 つちを おしていくことが できました。
 
じょせつきを つける、ゆきを かきのけることが できました。
 
じょせつきの前をかき分ける部品が ハート型で愛らしいけいてぃーです。 (目~ライト~もついているんですよ)
 
けいてぃーのいるじぇおぽりすという町が見開きで 詳細に俯瞰図で描かれており、施設も事細かに記されています。
 

ある日、大雪になって町は雪に埋もれて機能マヒ状態になります。
すべてのものが動けなくなって、
だれもかれも、なにもかも、じっとしていなければなりませんでした。
 
このことばの後に
けいてぃーは うごいていました。
 
真っ白な雪の中を、真っ赤なけいてぃーが勢いよく走り回ります。
 
埋もれた町を縦横無尽に走り回るけいてぃーのっカッコいいこと!!
 
「たのみます!」
「よろしい。わたしに ついて いらっしゃい」
 
次から次へと町中を走り回り、町は機能を取り戻すのです。
 
そして、全部仕事を済ませて、 家(じぇおぽりす どうろ かんりぶ)へかえります。
 
自分の仕事を淡々とする、
自分のできることを全力でする、
いつもと同じように仕事をする、
町を大雪からひとりで救ったけいてぃーですが、 それは当たり前のこと、といった様子なのです。
 
さすがに途中、けいてぃーの疲れた様子も描かれています。
 
すこし くたびれていました。けれども しごとを とちゅうで やめたりなんか、けっしてしません・・・・・ やめるもんですか。
 
ん~強い意志!!
 

雪国に景色を極彩色に変える

見返しに吹雪の中をけいてぃーが進む姿が描かれています。
 
水色のバックに白い大小の雪が吹雪く、 この雪の表現を見た時は驚嘆しました。
 
雪の背景にこの色を使うセンス。
この色で、一気に雪の世界は心躍るものとなるのです。
 
最初のけいてぃーの説明が描かれている場面は、 バートンさんお得意の額縁仕立て(とでもいうのでしょうか)で けいてぃーの所属する道路管理部の仲間たち(重機やトラック)が 小さな絵がひとつひとつに丁寧に楽し気に描かれています。
 
その数は26台!!
 
子どもを膝にして、この絵本を読んだなら きっとすべての乗物を指で差しながら 見ることでしょう。
 
同様に、町の施設も30の建物や場所が描かれています。
 
細かく描かれた場所や建物は、ちゃんと大雪の時に けいてぃーが助けに行く場所なのですよ。
 
手書き文字で、けいてぃーの動く音が 「ちゃっ!ちゃっ!ちゃっ!」とあるのが息子のいちばんのお気に入りでした。

 

ご訪問ありがとうございます。

絵本選びのきっかけになれば幸いです。