深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『ぞうのババール』なに不自由ないことが自由なのではない

鮮やかな朱色が目をひく絵本です。
ぞうが不思議ないで立ちで立っています。

 

動物が主人公のおはなしは、 子どもたちも大好きです。
小学校の読み聞かせでは 3年生4年生によく読みました。

 

おはなしが少し長いので 朝の15分ではギリギリ、 ちょっと時間を過ぎることもありました。

 

ぞう、という人とはかけ離れた動物が 人間のようにふるまう姿に 驚きと笑いをさそう、絵本です。

 

ぞうのババール

 

ジャン・ド・ブリュノフ 作
やがわ すみこ 訳
ページ: 48ページ サイズ: 26.8x20cm 出版社:評論社 出版年: 1974年

 

森から町へ、舞台が変わるとぞうも変わる?

大きなもりの くにで ちいさな ぞうが うまれた、 なまえは ババール。

 

ある日おかあさんといる時に、
おかあさんは狩人にやられてしまいます。
びっくりしたババールは一目散に逃げます。

 

そして、人間の町にやってきました。
そこは森とは大違いで、 何もかもが目新しく驚くことばかりです。

 

ババールは道ばたで出会ったおばあさんに 財布をもらい、 デパートに行き、 エレベーターに乗って、 洋服を仕立てます。
そして帽子に靴に記念写真。

 

絵本のよいところは、 違和感だらけなのに、何の断りもなく おはなしが進むところです。

 

ぞうとおばあさんの暮らし

ババールは財布をくれたおばあさんの家によばれます。 そして、一緒に暮らすようになるのです。

 

欲しいものはなんでも買ってくれるおばあさん。
何不自由なくても時折、森の生活が懐かしくなるババール。

 

2年経ったある日、 いとこのぞうと町で出会います。
そのいとこを探しに来た、ぞうたちと共に 森に変えることを決心するババールです。

 

そして、ババールはみんなに請われて王様になります。
人間の世界にいたババールは、
物知りだという理由です。

 

ぞうの世界と人間の世界

ひょんなことから、 ぞうの国から人間の町へきたババール。
絵本の中で異邦人的な存在でしたが 理解者~おばあさん~の助けもあって 次第に大人になっていく過程が描かれてのだと思います。

 

洋服の着こなし、歩き方、立ち居振る舞い。
どのページをめくっても 洒落たぞうのババールの姿が描かれています。

 

改めてぞうはどの方向から見ても存在感が抜群ということ。
全面の鼻、後姿のおしりとしっぽ、 横からみればもったりしたおなか、 見ているだけで楽しくなります。

 

おかあさんを目の前で亡くしたババールは可哀想なゾウといえます。
だからこそ、
人間の世界でなに不自由なく暮らすことが
できたのでしょう。

 

不幸は続かないし、
幸福もまた、続かない。

 

そんなことを、この絵本は脇道で語っているように思うのです。

 

重たいぞうなのに軽やかに見えるしかけ

とても洒落た絵本です。
パステル調でムラのあるの色使い、 細くて揺らいだ線。

 

陸上で一番重いはずのぞうババールが 軽々として見えます。

 

登場する人間や動物たちもなんだか ふわふわゆらゆら・・・
それがこの絵本の軽やかさでしょうか。

 

ご訪問ありがとうございます。 絵本選びのきっかけになればうれしいです。