深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『たんじょうび』おくり贈られる気持ちが描かれる

誕生日はいくつになってもうれしいもの。
1年が無事に過ぎた安堵と 次の1年への期待が交錯する日ですね。

 

子どもたちは誕生日がとても楽しみです。

 

まわりの大人たちはみな笑顔で
誕生日、おめでとう!
と嬉しそうですから。

 

この絵本は入学したばかりの1年生によく読みました。
入学おめでとう!
と言われて入学してきた子どもたち。

 

これからの学校での生活が 豊かなものになりますようにと願って読みました。

 

たんじょうび

ハンス・フィッシャー 文/絵
おおつかゆうぞう 訳
ページ: 32
サイズ: 31x23cm
出版社: 福音館書店
出版年: 1965年

誕生日の醍醐味はサプライズ

このおはなしに登場するのは、 リゼットおばあちゃんと そこに暮らす動物たちです。

 

森のそばの野原にある家には、

 

おんどり 1羽 めんどり 6羽 あひる  7羽 うさぎ  8匹 やぎ   1匹

 

がいます。

 

ねこが2匹、マウリとルリ いぬが1匹 ベロ

 

この3匹はおばあちゃんと家の中で 手伝いをしながら暮らしています。
その日はリゼットおばあちゃんの 76歳の誕生日です。

 

動物たちは出かけたおばあちゃんが返ってくるまでに お祝いの準備をしようと大奮闘します。

 

ケーキを焼いたり、ローソク76本を買いに行ったり…
たくさんのチャーミングな動物たちが、 生き生きと描かれています。

 

一生懸命に知恵をしぼって おばあちゃんのために誕生日のお祝いを考えます。

おばあちゃんにびっくりして喜んでほしい! その熱意さがほほえましいのです。

この誕生祝い計画がどうなるのか、 いくつもの驚くことが おばあちゃんを待ち受けています。

 

特に、動物たちが一堂に集まった会食のシーンは圧巻です。
見開きいっぱいに嬉しそうな顔が並びます。

 

うれしさのあまり涙をこぼすリゼットおばあちゃん。

 

次のサプライズは夜の野原の池です。
そして、おばあちゃんが最後に屋根裏でみつけた とびっきりの贈り物とはなんでしょうか。

 

動物たちがおばあちゃんを喜ばせようと 3つのサプライズを用意したのです。

 

躍動感あるフィッシャーの絵、ニワトリの絵が秀逸

フィッシャーはスイス生まれ。 ジュネーブの美術学校に入学し、装飾画や版画を学びます。
そこでパウル・クレーに教えを受けています。
(パウル・クレーは大好きな画家です!!)

 

卒業後は商業デザイナーとして活躍します。
もともと身体が丈夫でなかったため 過労で倒れ療養をかねた生活の中で 娘のために絵本を描き始めました。

 

この絵本もそんな中で描かれたものです。
動物たちが実に生き生きと動き回っています。

 

特にニワトリ(今年の干支ですね)の姿の堂々たるや、 思わず見惚れるほどの立ち姿!

 

うさぎやにわとりが駆け寄る様子、 輪になって話し合っている様子、 めんどりが贈り物に卵を36こ産む様子、 パーティーの支度にてんやわんやの様子、

 

賑やかさと期待感が、 軽やかな細い線と 薄い水彩で所々色づけられた色色によって、 表現されています。

 

ページをめくるタイミングが見事で、 込み入った絵の次には余白たっぷりと 明るい場面から暗い場面へと転換されています。

 

文章の量もほどよく 朝の15分にゆっくり読んで丁度よい絵本です。

 

見開くと60cmを超える絵本なので迫力満点です。
カラフルな色彩と温かなおはなし、 これ以上ない
子どもたちのためのおはなし
です。

 

親の思いをたっぷりと込める

この絵本は、並はずれたフィッシャーのデザインの力も堪能できます。

 

おはなしはもちろんですが、絵の美しさも十分に楽しめる贅沢な1冊です。

 

ほかにも「こねこのぴっち」「ブレーメンのおんがくたい」 いずれも楽しく愛らしい作品ばかりです。

 

フィッシャーが自分の子どもたちのために作った絵本。
そこには親の心情がたっぷりと込められています。

 

”たんじょうび”は、まさにそんな日のための代表といえるでしょう。
仲間の動物たちと贈る思いを共有し、 贈られたおばあちゃんの気持ちを思いやるのです。

 

子どもたちは大きくなることに 期待しながら成長できるのではないでしょうか。

 

ご訪問ありがとうございます。 絵本選びのきっかけになれば幸いです。