深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

りんごと過ごす四季の移ろい『りんごのき』

いまは一年中みかけるりんごですが、
やはりおいしくなるのは、収穫の秋ですね。
収穫の時期、いちばんおいしくいただけるのが旬です。
 
そんな収穫を心待ちにりんごの世話をしながら、
四季はめぐります。
 
この絵本で、収穫を待つという楽しみを知ることでしょう。
 
りんごのき
エドアル・ペチシカ 文
ヘレナ・ズマトリーコバー 絵
うちだ りさこ 訳
単行本: 28
サイズ: 18x17.6cm
出版社: 福音館書店
出版年: 1972年
 

木のまわりの自然の変化を感じる

そこから見えるりんごの木に目をとめたマルチンが、
りんごの木とまわりを観察しながら、季節を過ごしていきます。
 
雪解け、そして春に美しい花をさかせ、ミツバチが群れます。
 
夏、葉はぐんぐん生い繁り水やりに忙しい。
 
秋、実ったりんごが熟す時を心待ちにするマルチン。
 
りんごの木の冬春夏秋を、マルチンがみまもります。
 
収穫の嬉しさが、
最後にりんごを大事そうに持って家に入ってくる、
明るいマルチンの笑顔がすべてですね。
 

チェコ発、動植物の造形をたのしむ

この絵本は福音館書店の(世界傑作絵本シリーズーチェコの絵本)です。
 
世界のさまざまな国の絵本を紹介しようという試みは素晴らしいです。
 
作者のふたりは、チェコスロバキア出身です。
文を書いたペチシカはプラハ生まれ、カレル大学文学部で博士号を取得しています。
雑誌の編集に携わるかたわら物語や記事を書いています。
 
絵のズマトリーコバーもプラハ生まれ。
15歳の時から新聞の挿絵を描いていましたが、限界を感じて
その後絵本の制作を始めます。
以後、子どもの本を描き続けています。
 
チェコらしさ、というか『りんごのき』らしさ、
をどのように、とらえたらよいのでしょうか。
 
絵をよく見ると、
木の葉や草花、それらはどこか丸みをおびて、統一的。

 

雨や風の表現、それらは線というより立方体で表現されているよう。
登場する猫や犬ハリネズミ、それらは毛の表現が大仰、長い。
煙突から出る煙と浮かぶ雲、それらは密度が高い。
 
やはり見慣れた日本の表現とは一味違うようです。
そして、それが海外の絵本を読む、楽しさでもあります。
 
軽やかな色彩と明快な輪郭線が印象的な絵本です。
 
ご訪問ありがとうございます。
絵本選びのきっかけになればうれしいです