深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

インドの昔話『ランパンパン』動かないものが動く世界を楽しむ

絵本には世界各国の昔話をもとに作られたおはなしがあります。
日本の昔話とは一味違う、いろんな国の物語を楽しめます。
 
ご紹介するのは、インドの民話をもとにした絵本です。
 
繰り返される
ランパンパン、ランパンパン、ランパンパンパン。
のリズムが心地よく響き語り手も聞き手も調子が上がります。
 
歌うように読む人、
跳ねるように読む人、
一定のトーンで読む人、
 
読み人によって大きくイメージが変わる絵本ですよ。
 
ランパンパン
インド民話/マギーダフ 再話
ホセ・アルエゴ/マリアンヌ・ドゥイ 絵
山口 文生 訳
ページ: 36
サイズ: 25.8.x20.6cm
出版社: 評論社
出版年: 1989年
 
むかしむかしのインドのお話。
昔話の定番ともいえるこの枕詞ではじまります。
 

本気で怒るクロドリのいでたちに注目

クロドリの夫婦が木の枝に止まって、
亭主がいい声で歌っていると…通りかかった王様は、
クロドリの女房を間違えて捕まえて連れていった。
 
クロドリが王様に捕まってしまった女房を助けようと
とげの刀、カエルの皮を盾に、くるみの殻で兜、
クルミの半分で戦いの太鼓を作ります。
 
そのいでたちの立派なこと。
絶対女房を救うぞ、
そんな決意が姿にあらわれています。
 
そして、意気揚々、救出に向かうのです。
 

動かないものが動き出す、絵本の世界のルール

進んでいく途中、やはり王様に被害を被った ネコ、木の枝、川、ありが仲間になって城に向かいます。
 
それらの隠れ場所がまた、不思議。
みんんがみんなクロドリの耳に吸い込まれていきます。
くろどりの耳ってどうなってるの。仲間になるモノたちが変わっています。
木の枝や川が意志を持った形で描かれていて
クロドリとやりとりし、
仲間となって助太刀すると申し出ます。
 
これからどんな活躍をするのかしらと期待が膨らみます。
 
正攻法で正面から王様に向き合ったクロドリは、
あっさり捕まりますが、処刑の檻に入れられます。
 
ですが、入れられた檻をことごとく仲間のおかげで脱出します。
 
とり小屋は、ネコ
うま小屋は、木の枝
ぞう小屋は、アリ
王様の部屋は、川
 
 
とうとう王様は
女房をつれて出て行ってくれ
と降参するのです。
 

ユニークな仲間の描き方

クロドリの戦闘モードの出で立ちが凛々しく
  アリの集団や川はぐるぐるにとぐろをまいて表現されています。 ページ毎に様々な色があらわれ場面展開を明快にしています。
文章同様にページにも軽やかなリズムが、
曲線を多用した絵で表されているようです。
 
インドのおはなし、ということもあるのでしょうが、
色は乾いた感じにみえます。
 
見開きで細長く開かれたページには、
王宮の規模や広さがよくわかりますね。
 
一方、クロドリたちにくらべて、
王様や人間たちは、むしろ無機質に、
さらっと描かれ均一化されています
 
クロドリが王宮まで旅する景色は、
草花が咲き誇り、実に生き生きと描かれています。
 
たくさんの色は使われているけれど、
パステル色の色調で、目にやさしく心は和らぎます
 

驚くことってとても大切だな、と思わせてくれる

歌舞伎役者のごときクロドリの生真面目さが、
どこか笑いを誘います。
3歳から小学校3年生くらいまで、
読み聞かせで読んでいました。
 
小さい子は、ランパンパン~のリズムに目を輝かせ、
3年生は「どうやって耳にはいってんの~」と突っ込み、
ぞうはアリにやられるんだ」とびっくりしたり。
 
『ランパンパン』を読むのが十八番の歌うように読む人は、
小学6年生に読んだこともありますが、案外喜ばれていました。
 
懐かしさも手伝ってのことでしょうね。
背伸びしはじめた5年生・6年生にも、
昔話がもつ底力がちゃんと通じるのですね。
 
ご訪問ありがとうございます。
絵本選びのきっかけになれたらうれしいです。