深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

出会いとふれあいと別れを描く『赤い目のドラゴン』映画のようなシーンが印象的

映画にもなった「長くつしたのピッピ」 の作者リンドグレーンが文を書いています。
ふたりのきょうだいが出会ったドラゴンとの交流を 丁寧に描いています。

 

絵本ですが、かなり文章が多めです。
読み聞かせでは4年生、5年生、6年生によく読みました。

 

とても叙情的なおはなしでしっとりとした余韻を味わえます。
子どもたちも絵と文章に同期するように じっくりと聴いてくれる絵本です。
夕焼けが美しいので秋によく読みました。

 

赤い目のドラゴン

リンドグレーン 文 ヴィークランド 絵 ヤンソン由実子 訳
ページ: 32ページ
サイズ: 25.6x20.2x0.8cm
出版社: 岩波書店
出版年: 1986年

 

昔語りで語られる幼いころの思い出

 
わたしが小さかったころのこと、

 

と過去形で語られるおはなしです。
ある4月の朝、 唐突に豚小屋に現れた赤い目のドラゴン

生まれたばかりの子豚と一緒に、 当たり前のようにそこにいました。
それを見守る姉と弟。 なんの疑いもなく
「ドラゴン、だとおもうわ」

 

と姉の”わたし”はいいます。
生まれたばかりの子豚よりは
少し大きいドラゴンは、
飛び出したまん丸の赤い目、
恐竜の姿にこうもりのような羽、
ぽっこりお腹のでた鮮やかな緑色です

 

ドラゴンに毎日えさをあたえにいくふたり。
ドラゴンは不思議なものを食べます。
使い残しのろうそく
ひもやコルク

 

そんなものが大好きなドラゴンです。

ドラゴンの愛らしい姿に笑みがこぼれる

ドラゴンは、動く姿もユニークで愛らしい。
表情も泣いたりすねたり笑ったり
ついつい感情移入してしまいます。

 

やんちゃな子どもをなだめすかすように あいてをするふたりです。
いつもは子ども役のふたりですが、 ドラゴン相手だとふたりは親のようです。

 

くるくる変わるドラゴンの表情に魅せられます。

 

赤い大きな目に涙をためてみたり 豚小屋のすみでふてくされてみたり、
そして 日々は過ぎてゆきます。

 

出会った春から半年、 10月2日、 ドラゴンとの別れの時です。

 

映画のワンシーンのような美しい別れ

大きな出来事が起こるわけではありませんが、 ドラゴンとの出会いと別れ、 それ自体が大きな出来事といえるでしょう。

 

茜色の夕焼け空の太陽に向かって飛んでいくドラゴン。
見開き1面に描かれたドラゴンと太陽の場面に 大空を飛んでいるような気分になります。

 

茜色が、嬉しさと悲しさを ないまぜにしたような場面となっています。
さいごに
…わたしたちのドラゴンのことをかんがえて、なきました。

 

ドラゴンに出会えたら なんてラッキーなこと、と 子どものあなたもきっと思うことでしょう。

 

このおはなしを読んでいるあいだ、 時間が穏やかにゆっくり流れているかのようです。

 

ご訪問ありがとうございます。 絵本選びのきっかけになればうれしいです。