深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

小学校1年から読み聞かせたネコ好きにおすすめ絵本!ネコの数を数えてみたい『100まんびきのねこ』

NHK-BSの番組に
岩合光昭の世界ネコ歩き」という番組があります。

 

ネコと世界の風景、暮らし、
生活の中のネコの様子、性質など。
成り行きで見ることがあって、
見ているとこれが、おもしろいのです。
ネコのしっぽだけ、目の動きだけに注目したり、
壁や木からおりる姿だったり、
寝ているだけの姿とか、
野生を残していることが、しぐさに見えたり、
実にいろんなネコがいるものだと、
感心してしまいます。

 

どのネコもわが道を行く、
って感じです。

 

ネコって不思議な生き物です。

 

この絵本にはたくさんのねこが描かれています。
とにかくすさまじい数の猫が登場します。

 

白や黒や灰色、まだらやトラ模様といろんな柄の猫が描かれていますが、 モノクロだからこそ猫の量(数)と質(形・柄)が、 圧倒的に迫ってくるのだと思います

 

小学校でも1年生、2年生、3年生によく読みました。

 

たくさんの猫に「うわーっ」と
歓声があがることも。

 

身近なネコのおはなしは、
小さな動物をいつくしむ心も養います。

 

100まんびきのねこ

ワンダ・ガウグ 作
いしいももこ 訳
ページ: 32
サイズ: 26.8x18..cm
出版社: 福音館書店
出版年: 1961年

 

はじまりは、昔話のように

  むかし、あるところに、とてもとしとった おじいさんと、 としとった おばあさんが すんでいました。
わたしたちには、聞きなれたフレーズですね。

 

おはなしは、ガアグの創作なのですが、 どこか古のおはなしかと親しみをもって読み進むことになります。

 

大きな数が示すのは、数の表現のおもしろさ

ふたりだけでさびしい暮らしのおじいさんとおばあさん。 猫が1匹いたら楽しかろうと、おばあさんがいいます。

 

そこでおじいさんが、猫を1匹捕まえにでかけるのです。
丘を越えて谷間を通って長い間歩き、 とうとう、どこもかしこも猫だらけの丘につくのです。
  そこにも ねこ、あそこにも ねこ、 どこにも、かしこにも、ねこと こねこ、 ひゃっぴきの ねこ、 せんびきの ねこ、 ひゃくまんびき、1おく 1ちょうひきの ねこ。
このフレーズは、 お話が進むにつれて幾度となく繰り返される 象徴的なものになっています。

 

タイトルは「100まんびきのねこ」ですが、 本文で「1おく 1ちょうひきのねこ」とあります。

 

ですが、「100まんびきのねこ」の方がしっくりと
しますよね。

 

ものすごい数をしめす記号としての
100まん、であり、
1おく、1ちょうなのです。

 

ものすごくたくさんのねこ、とか
ありえないほどのねこ、
というより
100まんびきのねこ、
のほうが、たくさんいるように感じます。

 

細かな絵の隅々までながめつくす

猫の丘へたどり着く道のりは見開きで、 うねる曲線が、谷や丘、流れる雲、山々の木々や草草を 細かな線で密度高く書きこまれています。

 

右手の方へ歩いていくおじいさんがいて、 家から歩いてきた小道もちゃんと辿れます。

 

雲のまわりに帯状の細かな線は、風の道のようにもみえます。
そして猫の丘。 びっしり並ぶ猫の顔の大群。
おじいさんのまわりには立って
踊っているような猫もいます。

 

それぞれが気ままにいろいろなポーズをとっている猫たち。
その数に圧倒されます。

 

選ぶ基準とはなんでしょう?

おじいさんがその中から1番きれいな猫を連れてと、
猫の品定めをはじめます。

 

まずは白い猫を拾い上げますが、 すぐ白黒の猫が目につきます。
さらにふわふわした灰色の猫まっくろの猫、 茶と黄の虎の子のような猫と、
あたりをみまわすたびにきれいな猫をみつけて、
知らぬ間にそこにいる猫みんなを連れて帰ることになるのです。

 

あらあら。

 

さあ帰り道が大変です。何百万もの猫の大行列。

 

途中、池のそばで
  「にゃお、にゃお、のどが かわいたよ」と ひゃっぴきのねこ、 せんびきのねこ、 ひゃくまんびき、1おく 1ちょうひきの ねこが いいました。
どの猫も、ぴちゃ ぴちゃ とひと舐めずつすると、 池の水はなくなってしまったのです。

 

その後、「おなかがへった」と野原中の草もなくなってしまうのです。
おじいさんはこの時、考えなしに猫を全部連れて帰ります。
きれいな猫がほしい、というおばあさんの望みを叶えたかったのでしょう。

 

次々とかわいい、きれいな猫を見るうち
「1ぴき」はぬけ落ちてしまったのですね。

 

なにかを選ぶ時、
デザインに目をとられサイズを間違えたとか、
案外思いあたります。

 

100万匹のねこを連れて帰ってきたおじいさんに びっくりするおばあさん。

 

おばあさんは、こんなにたくさんの猫にごはんはやれない、 といいます。おじいさんときたら
「ああ、それには きがつかなかった」
「どうしたら いいだろう」
そして、しばらく考えたおばあさんは、
「どの ねこを うちに おくか、ねこたちに きめさせましょう」 「それが いい」
とおじいさんは、猫たちに聞くのです。
「おまえたちの なかで、 だれが いちばん きれいな ねこだね?」
すると猫たちは、
「ぼくです」「わたしです」
と自分が一番の猫だと、けんかをはじめて大騒ぎになります。

 

家の中に逃げ込んで様子をみているふたり。 しばらくすると静かになり外をのぞくと、猫が1匹もいなくなっているのです。
「きっと、みんなで たべっこして しまったんですよ」 「おしいことをしましたねぇ」
とおばあさん。

 

ところが、すみっこに
皮ばかりで痩せこけた小さな猫がいたのです。
この猫は、自分が一番きれいだと言わなかったのです。

 

だからだれにもかまわれず生き残ったというのです。
おじいさんとおばあさんは、 その猫の世話をしてだんだん可愛らしい、 まるまるとした猫になるのです。

 

消えちゃった猫たち、ちょっと可哀想…
これは、むかしむかし のおはなしですから、
  理不尽さや不思議はおはなしのスパイスと思いましょう。  

せかいじゅうでいちばん、ということ

自分が一番きれいだと
自己主張し争った猫たちは、 互いに食べあって消えてしまいます。

 

おじいさんたちにとって、 残りものには福がある、結果になっています。

 

食べあって1匹を残していなくなった猫。
この1匹を残すためにも、 100万匹というとてつもない数の猫を登場させる必要があるのでしょう。

 

数はその世界をその世界らしく形にする重要な要素です。

 

10匹や100匹では、このお話は成立しないのでしょう。
100万というありえない数の猫だから、 食べあって消えてしまうこともあり得る、と納得できるのです。

 

最後の見開きでは、おじいさんとおばあさんは、 ふかふかになった猫とともに過ごす日々を得て満足そうです。

 

丸テーブルを挟んでふたりともゆり椅子に腰かけ、 おじいさんはパイプをくゆらせ、おばあさんは編み物をしています。

 

おばあさんの毛糸玉が床に転がっていて、 じゃれる猫がいます。おばあさんは、
  「このねこは、やっぱり とても きれいですよ!」
といい、おじいさんはこう返すのです。
  「いや、 この ねこは、せかいじゅうで いちばん きれいな ねこだよ。 わたしには、ちゃんと、 わかるんだ。 だって わたしは、 ひゃっぴきの ねこ、 せんびきの ねこ、 ひゃくまんびき、1おく 1ちょうひきの ねこを みてきたんだからねぇ」
そしてもう一ページめくると、丸まって眠っている猫の絵。

 

ガアグの描く猫はどれもかわいらしく、
生き生きしています。

 

この絵本の見返しには、
地色が黄色、朱色一色で猫が描かれています。

 

本文のモノクロに対して、
じつに目に鮮やかです。

 

パターンは2つ。後姿で振り向いている猫と、 2匹の猫がバスケットのようなものの中で、 頬よせあっている猫のシルエットが、 丸いモチーフと草木をあしらったパターンで、
見開きいっぱいに描かれています。

 

ご訪問ありがとうございます。
絵本選びのきっかけになればうれしいです。