深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』はひとりで何でもやりたがる時期に読んでみたい

子どもの頃、汽車を見ると必ず手を振りました。
とても親近感をもてる、大きくて力持ち、
たのもしい乗物です。
 
今なら新幹線でしょうか。
電車好きはいくつになってもやめられないよう。
 
アメリカが舞台の機関車が主人公のロングセラー絵本です。
 
大きな絵本なので読み聞かせにも最適でした。
小学1年生や2年生に読むと、目をキラキラさせていましたよ。
 
いたずらきかんしゃちゅうちゅう
バージニア・リーバートン 作
むらおか はなこ 訳
ハードカバー
サイズ: 30.6x22.4cm
出版社: 福音館書店
出版年: 1961年
 

力強いパステルで描かれる機関車に乗った気分になる

パステル画のような陰影で描かれた迫力ある大判絵本です。 どの場面を切り取っても躍動感あふれる人物と景色があらわれます。
特にきかんしゃ、ちゅうちゅうが疾走するするシーンは 迫力満点です。黒の濃淡で描かれた絵は蒸気機関車を よく伝えています。
吐き出す煙がもくもくと描かれ 昼と夜のコントラストも余計に際立って見えます。 文字の配置が線路?煙?のようにうねっていたり 斜めに行頭がそろっていたり、 場面ごとにリズムが感じられます。

ひとりならもっといいことあるぞ、は本当か?

黒くてピカピカの機関車ちゅうちゅうは、
いつものように小さな町から大きな町へ客車をひいて、
行き来していました。
 
ある日、ふと自分ひとりならもっと早く走れて、みんなの注目も得られる、と
ひとり走り出すのです。
 
自由に走り回るちゅうちゅう、
ぶつかりそうになったり、跳ね橋を飛び越えたり、
大きな操車場に迷い込んだり、道(線路)に迷ったり、
しまいにぼろぼろになってきて、薄暗いところで止まってしまいます。
 
心配した機関紙たちが、最新の記者でちゅうちゅうを探索、
無事に連れて帰ることができるのです。
 
ちゅうちゅうがあれこれやってみて、 最後に自分なりに考えます。
好き勝手にやってもいいことはさほどなかったな…
いつものように喜んでもらえる、いつもの仕事をしようと
最後に、優しい煙を吐きながら夜空を落ち着いて走る姿に ちゅうちゅうの満足感が見えました。
 

翻訳は『赤毛のアン』の村岡花子さん、装丁や文字配置も注目

見返しは優しいパステルカラー。 街全体が柔らかに広がっています。
 
そのコントラストも魅力です。
翻訳が『赤毛のアン』の村岡花子さんです。
息子が子どもの頃たくさん読んだに気が付きませんでした。
作者のバージニア・リーバートンさんのデビュー作です。
機関車好きの長男のために書いた絵本で、アメリカでは1937年に出版されています。
バートンさんは『ちいさいおうち』や『せいめいのれきし』で日本でもファンの多い作家です。
 
日本は1961年が初版ですから、半世紀以上、
長く読まれている絵本ですね。
ご訪問ありがとうございます
絵本選びのきっかけになればうれしいです。