深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『おやすみなさいのほん』幼な子に眠りへのおまじないに

子どもたちは、元気がいちばん、 元気に遊んでゆっくり眠ってほしい、 それが親心ですよね。

 

ご紹介するのは、 おやすみ前にゆっくりと、 開いてほしい絵本です。

 

やさしい眠けが絵本の中に漂っているようです。
一緒にながめたら、 いっしょに眠ってしまいましょう。

 

おやすみなさいのほん  

マーガレット・ワイズ・ブラウン 文

ジャン・シャロー 絵

いしいももこ 訳
サイズ: 24.6x20.6cm
出版社: 福音館書店
出版年: 1962年

 

優しいパステル調の色彩と、 太く均一でない揺らいだ輪郭線が特徴的な ジャン・シャローの絵。

 

優しい穏やかな波のようなくり返しが心地よい
マーガレット・ワイズ・ブラウン眠りへの魔法の呪文のような文です。

 

ねむたいものたちの無防備な姿がやさしい

小鳥、さかな、羊、森の獣たち、
カンガルー、仔猫、ウサギ、ハチ、リス、 動物ばかりではありません。

 

ほかけぶね、じどうしゃ、とらっく、ひこうきも、 そして、子どもたち

 

さあ、外は暗くなって
やさしい語り口で眠る様子語られます。
よるに なります。
なにもかも みな ねむります。
お日様が地球に向こう側に大きく描かれ、 沈んでいく、そんなはじまりです。
  そして、ページをめくると、 家の中に男の子と女の子の姿が窓からのぞけます。 家の前には池があり、 月明りとともに、飛行機とんでいるのが 映っています。(飛行機も登場していますよね)  

目を閉じて、眠っている動物たちに注目

そして、いろいろなものたちが昼とは違う姿をみせます。
ことりたちは みな うたうことも とぶことも たべることも やめます。 ・ ・ ・ ねむたい ことりたち。
左ページに文字、右ページに絵。
小鳥の親子がそろって目をつむって、 寄り添って眠っている姿が 薄暗い色調のなかで描かれています。

 

木の上の小鳥たちのつぎは、 海の中の魚たち。
さかなたちは、
めを ぱっちり あけたまま ねむります。
この絵本で、 「そうだ、さかなには瞼がないのだ!」 と気づいた次第。

 

目を開けたまま水に漂っているさかなたちは どこかユニークです。

 

こうして、
ひつじはかたまって、
カンガルーの子はふくろで、
うさぎはきれいな目をつぶり、
ハチは巣に入り、
りすは気にかくれ、
子どもたちはふとんにはいり、
ねむるのです。

 

大きい文字は、ゆったりしている

見開きの片側のページに絵、もう一方に文が書かれていますが、 文の文字が、大きいのです

 

文字だけのページですが、 半分のスペースをうめています。

 

大きいことで、 ゆっくりと読みたい気分になりますね。

 

一日の疲れを癒す眠りに誘うやさしい絵本は、
大人にも必要、と すこやかに眠りにつくものたちの姿を見て、感じました。

 

この絵本を開いて、ねむたい動物たちやものをながめる。
読んでいるこちらも、ねむたさが伝わってくる…
そんな、絵本なのです。

 

慈しみの手で守られてこそ

子どもたちがお祈りをしているところに 大きな手が描かれています。
子どもたちを守る慈愛の掌…(神さまの手)
こうした慈しみの手で守られるべき存在なのですね。

 

ラストは宗教色の強い印象を受けますが、 絵本に登場したものたちの、
無心の寝顔に自然と、
「おまもりください」
という気持ちになります。

 

それが宗教という形を持つか持たないかの違いだけなように思います。

 

読む大人もこころ癒される絵本です。

 

ご訪問ありがとうございます。

絵本選びのきっかけになればうれしいです。