深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

小学生に暮らしと経済を学べる絵本!手作りと1年を実感できる『にぐるまひいて』

今は、生活に必要なものは、大抵買うことができますね。
 
作る人がいて、買う人がいます。
買う人がいるので、それを作る人がいます。
 
よく野菜を育てている人から、
季節季節に作ったものをいただきます。
 
よく知る人が作って野菜は、
その顔が見えて安心できますね。
 
なんでも手に入る時代ですが、
自分で作ったものや、作ってもらったものには愛着がわきます。
 
息子も自分で作った新聞紙で作った刀剣やレゴの作品など、
特別に大事にしていましたよ。
 
10歳ころパンケーキづくりに凝った時期があって
楽しそうに、焼いてデコレーションしていました。
 
いろんなもを手作りするのが当たり前だった時代の、
淡々とした日々と暮らしが、
端正な絵と共に描かれています。
 
この絵本は、19世紀はじめのニューイングランドが舞台です。
「人びとの生活と自然のために」
と、おはなしの前のページに記されています。
 
読み聞かせでも秋のしっとりとした時期によく読みました。
不思議と、気分が落ち着く絵本です。
 
1年生から6年生まで、
すべての学年で読んだことがある絵本です。
 
にぐるまひいて
ドナルド・ホール 作
バーバラ・クーニー絵
もき かずこ 訳
サイズ: 26.2x20.8cm
版社: ポルプ出版
出版年: 1980年

使うものを手作りして暮らしていた時代

ある家族の農場での1年間が丁寧に語られ描かれています。
とうさん、かあさん、むすめ、むすこの4人家族が、
季節にそって手仕事でいろいろなものを作ります。  羊の毛、つむいで織ったショール、娘が編んだ手袋、 ろうそく、麻、屋根板、白樺のほうき、 じゃがいも、りんご、はちみつ、ハチの巣、 かぶ、キャベツ、メープルシロップ がちょうの羽。  
暮らしに必要なたくさんの品々。
以前は個々の家でこれだけのものを作っていたのだ、 と思い起こされます。  
おはなしの始まりは、10月
 
そして牛にひかせた、
にぐるまに荷物をいっぱい詰め込んで
おとうさんは出かけます。
この いちねんかんに みんなが つくり そだてたものを
なにもかも にぐるまに つみこんだ
10日がかりで、にぐるまをひいて、
ポーツマスの市場にたどり着きます。
 
家族で作ったすべての荷物を売り、
空き箱やあき袋を売り、牛のくびきと手綱を売り、
荷車をひいた牛、
すべてを売り払います。
そして、手に入れたお金で、
暖炉に下げる鉄の鍋、娘にイギリスの刺繡針、
息子に箒をつくるためのバーロウナイフ、
家族のために薄緑色のはっかキャンディを2ポンド、
それらと残ったお金を持って、
 
家に帰ります。  
家族は、暖炉の前でゆっくりとした時を過ごします。
冬、家族はみな、またもの作りをはじめます。
 
そしてまた1年、にぐるまに積むものを作ります。
 

繰り返される暮らし営みは今も同じ

 
人の生きることそのものが淡々と綴られた叙事詩のようです。
おわりがはじまりになっています。
 
働いて作ったものをお金に変えて、また1年を繰り返す。
根本は、今もかわることはありませんね。
 
そのおはなしにぴったりな絵がクーニーの絵です。 端正な絵と色、けれど温かみを感じます。
 

季節の仕事をたんたんと

大事件は起こりませんが、
黙々と季節の仕事に取りか組む姿をとおして
1年をつくっています。
 
しずかに行われる、切り出しや、布つくり、
刺繍、ほうきつくり、ろうそくを作り、
楓の樹液で楓砂糖をつくります。
 
春には、ヒツジの毛を刈り編み物をし、農作業をする。
 
すこし前の暮らしは子どもたちにとって
おとぎ話のようで不思議な世界かもしれませんが、
めぐる季節と仕事をとおして
流れる時間を感じてくれる絵本だなぁ
と感じました。
 
ご訪問ありがとうございます。
絵本選びのきっかけになればうれしいです。