深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『まよなかのだいどころ』◆架空の世界の楽しみ方

『まよなかのだいどころ』は
『かいじゅうたちのいるところ』
『まどのそとのそのまたむこう』とともに
センダックの3部作といわれる絵本です。

『かいじゅうたちのいるところ』は絵本の王道的な作りであり、
極限までセリフをそぎ落とし描かれています。

一方『まよなかのだいどころ』は、
セリフもリズミカルでミュージカルをみるようです。

3歳くらいから小学2年生くらいまで、よく読みました。


読み聞かせでは、リズムで楽しみ、
膝の上では、ゆっくり絵の細部を味わえます。

まよなかのだいどころ

モーリス・センダック 作

ページ: 40ページ
ザイズ: 28.2x21.4cm
出版社: 福音館書店
出版年: 1982年

『まよなかのだいどころ』で起こっていること


ふとんのようにみえるパン(ケーキ)の飛行機に乗り、 ミルクのポットを頭にかぶり、得意顔でご機嫌なミッキー。


星空をバックに賑やかな街並みとパンつくりの材料が並ぶ。 看板の同じ書体がひとつもない文字が特徴的です。


タイトルの『まよなかのだいどころ』の文字がおどります。

ベッドに寝ているミッキーは、


ドーン ドサン ズン パン バン


騒がしい音に、 うるさいぞ しずかにしろ!


ベッドからくるりと落ちながら パジャマは脱げて裸ん坊に

 

おりたところは あかるい まよなかのだいどころ


同じ顔したコック帽をかぶった男の人が3人。

見事な体躯で、みな鼻の下にちょび髭をたくわえています。

コックさんたちは、ミッキーをミルクと間違えて、 ミッキーを粉といっしょにかき混ぜて…


真夜中の台所の背景は、表紙と同じです。


裸のミッキーはオーブンで焼かれる途中に逃げ出して、
パンの衣装に身をつつみ、 今度は水からパンをこねだします。


こねて、たたいて、かためて、のばす


できたパンの飛行機でだいどころの天の川へ、 ミルクをとりに行きます。


そして、ミルクの巨大ビンに飛び込み、 パンはとけて、裸ん坊となって、 コケコッコーと叫び、


転がり落ちて、自分のベッドへ。

ベッドから落ちてはじまり、落ちておわるおはなしです。


絵本だからいい『まよなかのだいどころ』のよさ

さて、かなり詳細に絵本を文章にしてみましたが、 この文を読むと、支離滅裂…ですよね。

ですが、絵といっしょにみると実にたのしい!!

・ミッキーの表情やしぐさの愛らしさ
・背景が夜空、ビルが並ぶふしぎな台所
・三つ子のコックさんのちょっと不気味だけど、ユーモラスなミッキーとのやりとり

この絵本は、
コミックのようなコマわりで描かれている場面も多く、 ストーリーが進みます。


吹き出しのようにセリフがあります。 マンガの手法ですね。

おはなしの流れがスムーズになって、 場面転換もたくさんあるわけです。

文章だけではなんのことやら、ですが、 絵本ではとびきり面白くなるのです。


絵本でおこる架空世界への記号は、絶対にありえないこと


まよなかのだいどころでは、 ありえないことがたくさん起こります。


・同じ顔のコックさんが3にん
・裸で飛び回るミッキー
・ミルクと間違えられて、こねられる
・オーブンで焼かれ、飛び出す
・パンの飛行機で飛ぶ
・だいどころのあまのがわへミルクをとりに行く
・牛乳瓶に飛び込む
・たくさんの同じ顔…


それは架空世界の記号だと思います。


現実で双子以上の、 同じ顔の人を見るのはまれですからね。


いやいや、オーブンで焼かれるなんて… と思いますか?


中途半端な表現よりは、


絶対ありえない、

 

これが肝心です。


極端な表現だからこそ、ワクワク・ドキドキするんですね。



知らないうちに進んでいる時間の行方

 

こねて たたいて かためて のばす


ここはお気に入りのセリフで、 パン作りの楽しさが伝わってくる場面です。


いつも朝起きるとほかほかのパンがあって、 そのパン(ケーキ)はこうして真夜中に作られているってこと。

 

ミッキー どうも ありがとう これで すっかり わかったよ ばくらが まいあさ かかさずに ケーキを たべられるわけが

 

 
さいごのページにかかれている文です。


真夜中というのは子どもにとって未知なる世界。


知らない間に進んでいる、
なにかが起こっている、

そんな世界の不思議を垣間見たいと思うのです。

すべての子どもたちにおすすめです。

眠っている間に、


こんな夢みてるかもしれないよ


って、びっくりさせたいのです。

 


*絵本では【ケーキ】とあるのですが、

 表現が混合してますが、絵本の楽しさは変わりません。

ご訪問ありがとうございます。

絵本の解釈は個人的なものです。

絵本選びのきっかけになればうれしいです。