深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『ティッチ』◆にみる兄弟の当たり前

 この絵本に登場するのは、三人の兄弟のみ。

ティッチ、は末っ子の男の子の名前です。

 

画面はシンプル。

ほとんど背景もありません。

(見開き3ページ以外は、紙の色の白が背景!)

 

三人の関係性だけに注目したともいえるでしょう。

 

小学校入学したての1年生によく読んだ絵本です。

 

ティッチ

パット・ハッチンス さく・え

いしい ももこ やく

 

ページ: 32

サイズ: 25.8 x 21

出版年: 1975年

出版社: 福音館書店

 

おはなしは…

おはなしのはじまりです。

 

ティッチは、ちいさな
おとこの子でした。

ねえさんの メアリは、
ティッチより ちょっと おおきくて、

にいさんの ピートは、
ずっと おおきな子でした。

 

ちいさなティッチが、持っているものは
いつもメアリやピートのものにおよびません。

(あたりまえですよね)

自転車や楽器、大工道具、兄弟のなかで見劣りするものばかりです。

(末っ子ってそうゆうものです)


けれど、

 

最後にティッチの持っていた小さな種が、
大きく大きく育つのです。

 (やったー!)
 
というおはなしです。
 
 

子ども時代の兄弟の当たり前


文章は淡々と情景を語るだけです。
感情を表す言葉はありません。


絵をみると、ティッチはさほどいじけたりしている様子もありません。

メアリとピートもちょっと自慢気な感じはありますが、
意地の悪い感じではありません。

感情が唯一見えるのが、植えた種がぐんぐん大きくなったとき、
この時ばかりは、メアリとピートは驚きの表情です。
ティッチは少し自慢げにもみえます。

もちろん作者のパット・ハッチンスの画風もあるのでしょうが、
兄弟の序列はこうしたもの、と思えるのです。
 

 画面のシンプルさから見えるもの

 
背景は、凧揚げの時家が描かれていただけで、
それ以外は白、というか紙の色。こうした絵本も珍しい。

すっきりと、今何をテーマにしているのかが明確になっているように思います。

色の数も少なくどのページも受ける印象は似通っています。
 
 

おはなしのおわりは、
(ピートは大きなシャベル、メアリは大きな植木鉢を持っていました)
 

ところが、ティッチの もっていたのは、
とても ちいさな たねでした。

そして、そのたねは、
めをだして、

ぐんぐん、ぐんぐん、

おおきく なりました。

 
よかったね、ティッチ。
 
 

一人っ子の息子は… 


一人っ子の息子は、この絵本を見て、
 

「わーっコレ懐かしい」 といってはらりはらりとめくって、


「えー、覚えてるの、あんまり読まなかったけど...」


「覚えてるよ、そうそう、こうでしょ、そう、ふ~ん」 だって。



記憶では2~3回だと思うけど、
学校でも数回、で息子のいるクラスで読んだかは記憶にないし。

子どもの頃の記憶って不思議です。
こちらが覚えてるでしょう、ということは記憶になく、
こんなこと覚えてんの、ってことを記憶していたり。

でも、絵本はほとんど覚えているみたいです。


絵も内容もシンプルで力強い、

そんな絵本を子ども時代にたくさんふれてほしいです。

 

 

お読みいただきありがとうございます。

絵本選びの参考になればうれしいです。