深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『しりたがりやのちいさな魚』◆好奇心と自由

スゥエーデンの絵本作家エルサ・ベスコフのちょっとユニークなお話。

読み終えるのに15分はかかる、かなりお話しの量がある絵本です。
 
日差しが強く感じられ水辺が恋しくなる
5月から6月によく読みました。
 
ちょっとおかしな魚たちの姿が子どもたちの笑顔を誘います。



しりたがりやのちいさな魚

 
  • エルサ・ベスコフ作・絵
  • 石井登志子訳

 

ページ: 24

サイズ: 26 x 19.4

出版年: 2001年

出版社: 徳間書店

 

魚に足が生えたなら…

 

表紙には、桟橋に腹ばいになって、水の中を覗き込むトーマスの姿。

水の中ではなにやら相談中の4匹の魚たち。

 

スイスイは魚のスズキの子、とてもしりたがりやです。
ちいさなスイスイは、さかなの仲間たちと話すうち
「水のないところ」「ニンゲン、みてみたい」と好奇心を刺激されます。

そしてある時、釣りにきた男の子トーマスに釣られます。


さて、水のなかの魚たちは、スイスイを助けに行こうと
ブクブクバーバーという魔法衛お使えるカエルの魔女に、
なんと足を生やしてもらうのです。

 

3匹そろってトーマスの元へ。
 
「~ここにいたら、スイスイは、
しんでしまうわ。」
 
という、彼らの言い分に納得して、トーマスはスイスイを水に返しました。
 
スイスイたちを眺めてるうち、泳ぎたくなったトーマスは、
魚たちの助言で泳げるようになります。
 
 

なにが自由でなにが不自由か

〜きれいな水のなかを、すいすいおよげるわれわれとくらべてら、二本の足で、かわいたところを歩かなくちゃならないニンゲンガエルなんて、どいつもこいつも、かわいそうなもんだ!
 
ガミガミおじさんのこんなセリフでお話しは終わります。
確かに…。
 
魚目線で見るとニンゲンはかなり不自由な生き物に見えますね。
 
 
 
魔法で足を生やした魚たち、その姿の不思議なこと。
魚の形は手足のない形が完成形なのだと、つくづく感じました。

登場する魚たちの名前がも楽しい。
 
スイスイを助けに行くのは、
カレイのテンテンおばさん、コイのピカピカおじさん、カワカマスのガミガミさん。
 
まだ世の中(水の中)を知らない、
けれど好奇心はあって「なんでも知りたい!」スイスイ。
 
やんちゃな子どもは、経験をつんだ大人たちに
見守られ助けられ経験を積んで大きくなっていく。
 
そんな当たり前の世界をちゃんと描いてくれている絵本です。
 

水の中の世界を覗き見る

そしてどこか懐かしさを感じるパステルカラーのくすんだ色彩。
特別な水辺ではない、大きな事件が起こるような街ではない
日常が描かれる色彩に感じられます。
 
どこか50年代の映画の一場面のような印象を
いつも受けます。
 
しずかな水辺の優しい緑がかった青系の色が
涼やかさを感じさせてくれる絵本です。
 
そこに足をはやした魚たちが写実的に描かれていて、
それでいて不自然ではない。
 
こんな魚いるのでは!?
なんて思わせてくれる、絵のうまさに驚きました。

リアルなのに愛らしいのは、目線でしょうか。
魚たちの会話が聞こえてきそうです。


このお話しを読むと、
いつも水の中の魚のたちがうらやましくなるのです。
 
さいごにトーマスが魚泳ぎを裸ん坊で泳ぐ姿が、
とても気持ちよさそうです。
 
 
 
 
お読みいただきありがとうございます。
絵本選びの参考になればうれしいです。