深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『アンガスとあひる』擬音が楽しい絵本!ヒトといない時の動物たちの姿を覗き見る

犬はもっとも身近にいる動物ですよね。
見かける犬ながめていると、
何考えているのかなぁ、
なんて、ふと思います。
 
ちいさな子どもに行動パターンが似てるかも…
 
好奇心旺盛で、
知りたがりで、
行動が突飛で、
考えなしで、
怖がりで、
柔らかくて、
あったかくて、
カワイイ。
 
ご紹介するのは、
スコッチ・テリアとあひるが繰り広げる、
ユーモラスな姿が印象的な絵本です。
 
明るく晴れやかな絵本で、
4歳くらいから、小学校では、
小学1年生、2年生、3年生によく読みました。
 
アンガスとあひる
マージョリー・フラック 作
瀬田 貞二 訳
ページ: 32
サイズ: 24.4x16.8cm
出版社: 福音館書店
出版年: 1974年

陽ざしを感じる色使いと動物たちの動きの多様さ

ページを開くとレモンイエローの鮮やか背景に 黒いスコッチテリアと白い2羽のあひるが描かれています。
ひとつとして同じポーズはありません。
 
スコッチテリアは、
 
走ってみたり、 吠えてみたり、 眺めてみたり、 警戒してみたり。
 
あひるは、
羽ばたいてみたり、 振り返ってみたり、 話しあってみたり、 首を伸ばして走ってみたり、 のんびり歩いていたり。
 
このおはなしは「どんなかしら」と 期待に胸がふくらみます。
 

興味津々のアンガスの動きに注目する

あるうちに、アンガスという こいぬが すんでいました。 アンガスは、スコッチテリアで、 からだは とても ちいさいのに、 あたまと あしは おおきな いぬでした。
きょとん、としたアンガスの愛らしい姿。
なんでも知りたがり、 鏡をのぞいては「だれだろう」とか、
くわえて持ってこれるもの(靴)と 持ってこれないもの(ズボンの吊りひも)があるのはなぜ?とか
おもてにも関心ごとはたくさんあって、 中でも庭の境の生垣のむこうがわから聞こえてくる やかましい音が気になるのです。
その音は、
ガー、ガー、ゲーック、ガー!
とか
ゲーック、ゲーック、ゲーック、ガー!

アンガスとあひるの弾ける擬音をたのしむ

ある日アンガスにチャンスが訪れます。
表へのドアが開けっ放しになっていて、 首に皮ひもも紐を握っている人もいなかったので、 これ幸いと、表に飛び出したのです。
 
垣根の下をくぐりぬけると、 目の前に、 2羽の白いあひるがいたのです。
ガー、ガー、ゲーック、ガー!
アンガスはうなります。
ウーウーウーウーウーワン!
あひるたちは、
ゲーック!ゲーック!ゲーック!ゲーック!ゲーッ!
アンガスは追って、あひるは逃げて、 あひるが水飲み場で休んで、
またアンガスが追って、あひるが逃げて、 アンガスが水飲み場で休んで、
そして、あひるたちはなにやら相談し,
あひるたちの反撃開始です。
シーシーシーシーシーシーシュ!!!
アンガスは猛スピードで、しっぽを巻いて逃げ出します。
家の中へ一目散!!
ソファの下に潜り込んで、
そして、とけいの きざむ、 いち、 に、 さんぷんかん、 なにごとも しりたいと おもいませんでした。
 
しりたがり屋のアンガスも、
2羽のあひるの反撃に肝を冷やしたようですね。
ソファの下で、やれやれ、といった表情のアンガス。
 
でもまた少し時間がたったら、
しりたがり屋が復活することでしょう。
 

躍動感ある擬音を楽しむ

この絵本を小学校で読むときは、 繰り返される鳴き声が楽しいリズムとなっています。
読んでいる方も楽しい!!
 
子どもたちも、躍動的なアンガスやあひるの絵に 見入ってくれる見せ場、となっています。
 
ウーウーウーウーウーワン!
ゲーック!ゲーック!ゲーック!ゲーック!ゲーッ!
シーシーシーシーシーシーシュ!!!
あひるのアンガスを追う、
シーシーシー…
スピード感あふれる擬音です。
 
子どもたちは擬音大好きですよね。
 
言いたいことが、音となって弾ける時期がありますね。
好きなだけ話を聞いてあげられたら、最高です。
 
わけわからなくても、擬音で楽しさや状況が感じられますからね。
 
大急ぎで逃げるアンガスの心境、 逃がしてなるか、 と前のめりのあひるたちは迫力満点です!!
 
動物どうしのやりとりは、 つぎは、どう動くの?
そんな楽しさでいっぱいです。
予想不能な動き、 子どもたちに似ていますよね。
 

訪ねたくなる調度品のある家や水飲み場がある庭

絵本でモノクロと交互に描かれるカラーページ
アンガスとあひるも、 カラーとモノクロでは印象がことなります。
 
カラーのあひるは写実的で、 モノクロは動きがシャープに感じられます。
アンガスとあひるが走り回る庭は、とっても広そう。 柳の木の木陰にある水飲み場、そこに咲く草花、 景色はカラーが映えますね。
 
地面に落とされた影に強い日差しを感じます。
地面のレモンイエローが元気を伝えています。
アンガスがうろうろする、家の中、 花柄の壁紙がすてきです。
 
鏡や椅子、ソファのファブリックもかわいいですね。
ソファは一部しか描かれていませんが、 座ってみたいな、って思わせます。
 
調度品がそこに暮らす人々を うまく連想させていますね。
色使いもポップで軽やか、そこに行ってみたくなります。
 
好奇心旺盛でちょっとだけ臆病なアンガスに 子どもたちは、トモダチを感じることでしょう。
マージョリー・フラックの描く動物たちの絵は、 動物たちを抱きかかえた時の感触をよみがえらせるようです。
 
ご訪問ありがとうございます。 絵本選びのきっかけになればうれしいです。