深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『うさぎのみみはなぜながい』何事も理由を考えてみる

 これは、メキシコがまだナオワの国といった時代の、
おおむかしの物語です。
 そのころすんでいたメキシコ人は、みな、わたくしたち日本人そっくりの人たちで、
アステカ文化という、たいそう高い文化をもっていました。


うさぎのみみはなぜながい

北川民次 作

出版社: 福音館書店

出版年: 1982年7月

 


中表紙に上記のような、まえがきがあります。
作者の北川民次はメキシコに暮らして絵を描いてきた人です。

絵本の題名どおり、うさぎのみみが、なぜ、長くなったのかを
物語っています。

うさぎは山の神さまのところへでかけ、お願いします。
ちっぽけなからだしか授けてもらえなかったために、
もりの仲間にいじめられ、ころされてしまう、
もっとからだを大きくしてください、と。
神さまは、
「よし。では、おまえがとらと、わにと、さるとを、じぶんの てで ころして、
その かわを もってきたら、おまえの ねがいを かなえてやろう」といわれました。


無理難題に途方にくれながらも、うさぎは森へ出かけて行きます。
そして勇気と知恵で、見事その難題にこたえたのです。

「かみさま。おおせのとおり、とらと、わにと、さるとを、わたしじしんの てで ころして、
かわを とって もってまいりました。
 かみさま。どうぞ はじめの おやくそくどおり、わたくしを もりの なかで いちばん おおきな けものに してください」
かみさまは しばたくのあいだ、だまって じっと、このちっぽけな うさぎを みつめておられました。それからしずかに こういわれたのです。

神さまは、うさぎのことをちいさくこしらえたが、すばっしっこく利口に作ってやった。
だから三匹に勝つことができたのだと。
この上、大きなからだをさずけたら森中のけものを殺してしまうに違いない。
だから願いを聞き届けるわけにいかない。
「~しかし、せめてひととこだけでも、おおきくしてやろう」
そうして、神さまはうさぎの両方の耳をつかんで遠い遠い大地の上を投げ出されました。

そのときから、うさぎのみみは あのように おおきく ながく なったのです。


最後のページは、耳の長くなったうさぎのやさしげな姿。
それまでのうさぎの姿は、ちょっと怖い・・・
三匹に勝つために戦闘モードだったのでしょう。

絵は黄色がベースとなって茶色、濃いグレーの4色使い。
カラーとモノクロが交互に現れる絵本によく使われる様式。
森の木々や様子、動物が異国を感じさせる造形です。


神さまの裁量はいかが。
うさぎは長くなった耳を気にいったのでしょうか。