「名馬キャリコ』活劇でスカッと爽快になる
はじめてこの絵本をみたとき、
まるで映画のよう、と思いました。
名馬キャリコ
バージニア・リー・バートン 作
せたていじ 訳
出版社: 岩波書店
出版年: 1979年11月
ところははるか、西部のサボテン州に、その名をキャリコとよぶ名馬がおりました。みめ美しくはありませんが、あたまはめっぽうきれましたし、足のはやさは、とびきりでした。
とはじまります。
おはなしは痛快な勧善懲悪ストーリー。
牛を盗み出して、捕まって牢屋行、脱獄して、また悪さを働きますが、
キャリコの活躍で事なきを得、悪さはすまいと回心するスチンカー。
あれよあれよとおはなしは二転三転、
悪党のすごみやスチンカー一味が憎めないキャラクターですし、
最後は心を入れかえて、大団円。
全58ページ、1ページに正方形2コマか1コマの長方形に、
小気味よく絵が続きます。
全てモノクロというのも、モノクロ映画を観ているようです。
絵が黒の単色に対し、背景の色はどんどん変わります。
黄土色、肌色、灰緑、橙色、グレーピンク、鮮やかピンク、若草色、明るい黄土色、
どの色もシックな感じです。
リズミカルな動き、馬の躍動感、雲や雨、土煙などデザインが洗練されており、
風景の奥行や距離感が見事、登場人物がいきいき動いている絵本です。
本のサイズも小さ目、天地16.5㎝、幅20.5㎝ほど。
本は小さい方が集中してできるものです。
前後の見返しに全ページがフィルムのようにならんでいます。
扉が映画のタイトルのようですし、余分なものが一切ない装丁が清清しい。
おはなしも絵も、スカッと爽快な気分を味わえる1冊です。