深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『金のがちょうのほん』昔話の摩訶不思議な世界

レズリー・ブルック文・画のこの絵本には、
副題にあるとおりー四つのむかしばなしーが収められています。

「金のがちょう」「三びきにくま」「三びきのぶた」「親ゆびトム」、
いずれもイギリスの昔話、日本人にもなじみ深いおはなしです。
絵本が出版されたのは1904年ですから100年以上も前のこと。


昔話の絵本は、文を書く人、絵を描く人によって随分と印象がかわります。
この絵本は写実的で線が細くて繊細、
ですが、どのおはなしもどこかクスッと笑えるような風刺が効いているのは、
イギリスの作家だからでしょうか。


色使いも独特で、表紙のオレンジが全他のベース色になって印象的。
レトロな雰囲気が線画と、一見すると子どもの絵本のように見えませんが、
存外子どもはこうした絵本も好きなようです。

 

 


「金のがちょう」では、三人の息子が登場しますが、
末の息子は親にもさんざんな扱われよう、呼び名も”ぬけ作”です。
描かれるぬけ作もおじいさんのように見えます。


兄たちと同様に森に木を伐りにいきたいといい、
同じように森で小人に出会います。
持ち前の優しい心根が功をそうし、金のがちょうを手にするのです。
その後の紆余曲折、小人の助けもあり、笑わないお姫様を笑わせ、
王様に認められ姫と結婚して王様となるしあわせに暮らすのです。


ぬけ作が最後には王様らしい風貌になっていました。


「三びきのくま」では女の子が”きんきらこ”という名前で登場します。
くまたちの表情豊かで、とにかくユーモラスなのです。


「三びきのこぶた」のぶたたちの、椅子に座った様子や暮らしぶりは
まさしく人間風刺そのもの。
躍動感あるぶたたちの姿がとにかく楽しい。


「親ゆびトム」では人間がたくさん描かれていますが、
大人みな癖のありそうな人ばかりです。
小さなトムが愛らしい。


日本のおはなしには見られない、イギリスの雰囲気を伝える1冊です。