深読み!海外名作絵本100

発表から25歳年以上読み継がれている”これだけは読んでおきたい”海外の名作絵本の数々。 読み聞かせ歴15年、のべ9000名をこえる子どもたちに絵本を読んできました

『せんろはつづくよ』きみとぼくのつづく明日へ

2だいの ちいさな きかんしゃが
せんろの うえを はしります、
2だいの ちいさな きかんしゃは
にしへ むかってしゅっぱつです。

ぱふぱふ ぱふぱふ
ちゃぐちゃぐ ちゃぐちゃぐ
ぱふぱふ ぱふぱふ
ちゃぐちゃぐ ちゃぐちゃぐ

 

せんろはつづくよ

マーガレット・ワイズ・ブラウン 文

Jシャロー え

与田準一 訳

 

出版社: 岩波書店

 


線画で最新式の機関車と旧式の機関車が、
左右から線路をこちらに向かって走ってくる、
そんな場面にこの文がつけられて、おはなしは始まります。

ぱふぱふ、が最新式の機関車で、
ちゃぐちゃぐ、が旧式の機関車はの音です。
最新式はグレイ色で、男の子が乗り、
旧式はピンク色で、女の子が乗っています。

10年ぶりくらいに読んだ絵本ですが、
驚きました。
まず、絵。
線画の自由な、のびのびとした線路や風景が、
いきいきと描かれています。
使われている色も7色ほどで、トーンが統一された印象です。



トンネルの白と黒の長い線、
雪の大きな降りよう、
細い煙や巨大な煙、
渦巻く風や大きな月や太陽、

その表わしかたの洒落ていること。
こんな風であってほしい、
という見え方を描いてくれているようです。
このあたりの絵は本当に素敵です。

 

雪と雨と



機関車には男の子と女の子が、
雨や雪では傘をさしたり、月夜の夜は毛布をかぶって、
旅をするのです。
また、機関車には牛やがちょうが乗っていて、
その表情が場面ごとに変わって楽しいです。

おはなしの中で彼らのことは語られず、
最後に、きみとぼく、と語られます。

そのおはなしも、ひたすら西へ機関車はむかう、というもの。
何があっても、西へ西へ。
いろんな時を過ぎて、

ようやく にしに つきました。
おおきな あおい うみでした。
2だいの ちいさな きかんしゃは
のこえ やまこえ きたのです。
ながい ながい たびでした。
くたびれたけど きみとぼく
あかるい うみに つきました。
たのしい うみに きたのです。

アメリカの西部開拓を思い起こさせる西への旅です。
海について、ふたりは着る物を脱ぎ捨て、海に入ります。

彼らにとって西への旅は辛く恐れるものではない、
ということが、その表情からわかります。
淡々とひたすら進むこと、
どんなことが起こっても、恐れず行き先を見て、
子どものあるがままの成長をみたようでした。

マーガレット・ワイズ・ブラウンとジャン・シャローは、
「おやすみなさいのほん」でもコンビを組んでいます。
こちらの絵本をさきに読んでいたので、
細い線のシャローの絵の巧みさにうなりました。
(おやすみなさい~は太い線が温かみをもった絵になっています)

 

見返しもポップ。
機関車が輪になって磁石のまわりを走る、
そしてそこに機関車にのっかって楽しげなふたりも描かれています。

どこまでも、せんろはつづくよ、を感じさせるものです。