『ルピナスさん』世の中を美しくするためにできること
言葉にしてみると、また声に出してみると、
流れるような、そして美しいひびきを持って、
名前の美しさそのままのピンク、紫、白のパステルカラーの花。
作者はバーバラ・クーニー、現代アメリカを代表する絵本作家です。
いちばんの特徴はその端正な筆致、居住まいを正したくなるような絵です。
面で描かれた絵、品のよい色使いと色の数、光を多く反射している色。
見開きの片側に目いっぱい書かれた絵は、一枚の絵画のようです。
見ていると、草原の黄緑と蒼い海が心に残ります。
タイトルの副題に、ー小さなおばあさんのお話ー。
ルピナスさんが大おばさん、という姪が語る形のおはなしです
なぜルピナスさん、と呼ばれるようになったのか、その一代記。
子どもの頃の名前はアリス、海辺の町に住んでいました。
絵描きのおじいさんの膝の上に座って話すふたり。
世界中を旅して、おばあさんになったら海のそばの町に住むというアリスに
おじいさんはこういいます。
「それはけっこうだがね、アリス、もうひとつ、しなくてはならないことがあるぞ」
「なんなの?」
「世の中を、もっとうつくするために、なにかをしてもらいたいのだよ」
大きく育ったアリスは、ミス・アランフィアスと呼ばれ、世界中を旅するのです。
そして時は経ち、おばあさんになって、海のそばに家をみつけ暮らしはじめます。
家のまわりの岩がごろごろの土地を耕して花の種を撒きました。
具合が悪くなったときにベッドからルピナスの花が見えました。
一番好きな花。
回復してからルピナスの種を夏中、村のあちこちにまいて歩いたのです。
次の年、村じゅうがルピナスの花であふれました。
それが、おじいさんとの約束でした。
さいごは白髪のおばあさんになったルピナスさんが子どもたちに語るのです。
「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしなくては」
絵本の中にある光の表現が好きで、クーニーの絵本をながめると心洗われるのです。