『ムーン・ジャンパー』だれもがこんなふうにしてみたくなる
なんとも、しっとりとした空気が感じられる絵本です。
ただただ生きる喜びを感じられる、そんな絵本です。
ムーン・ジャンパー
ジャニス・メイ・ユードリー 文
モーリス・センダック 絵
谷川 俊太郎 訳
出版社: 偕成社
出版年: 2014年10月
おひさまは、くたびれている。そらから
うとうと ねむりかけた おかへ おりてくる。
はじまりの文。
くたびれたおひさま、という表現に笑ってしまいます。
ある夏の夜、
青白く輝く月に向かって子どもたちが、ジャップするのです。
青々と茂る、芝生の広がる庭で、
月を見上げる子どもたち。
男の子が2人、女の子が2人。
木に登ってみたり、でんぐり返しをしてみたり、
走りまわって、ジャンプして、
届かないおつきさま。
お話のなかで、おつきさま大きくなって、
より神々しさを増してゆく。
おかあさんに時間ですよ、と呼ばれて、
おつきさまと夜の時間との戯れる時は、終わりです。
寝床につく子どもたち。
おつきさまは、そらの うみを わたってゆく。
4にんは ねむって、 あしたのおひさまを ゆめみる。
おわりの文。
月と遊び、おひさまを待ちわびて、
明日に向かって生きる子どもたち。
そこに見えるおつさまを、触れそうに思って、
手を伸ばしたことを、ふと思い出します。
見えているのに届かない、不思議。
センダックの絵は、とても繊細。
芝生がひんやりと湿っている、
月の光はほのかにオレンジがかって見えたりもするのです。
樹々の肌や枝や葉の一枚一枚が月の光を浴びて輝いています。
裸足で駆け回る子どもたちの飄々とした姿が、
なんとも愛おしいのです。
詩人谷川俊太郎さんの訳。
センダックの絵本を訳したのはこれが初めて(のはず)。
この絵本が作られてのは1959年ですが、
日本語訳で出版されたのは、2014年です。