『星座を見つけよう』子どもと一緒に楽しむ星の絵本
星一つ残して落つる花火かな 酒井抱一
いつの時代も星は人々に詩をもたらしてきたことがわかります。
星座を見つけよう
H・A・レイ 作
草下英明 訳
出版年: 1969年4月
出版社: 福音館書店
本の内容紹介から
あなたは、星や星座の名前を、どのくらい知っていますか? 昔からの方法で星と星を結んで作る星座はとてもややこしいものです。でも、H.A.レイが、とてもわかりやすく、イメージしやすい、独自の結び方を考えてくれました。
また、星の名前や明るさ、宇宙での距離のあらわしかた、春夏秋冬、季節ごとの星図など……語りかけるような調子でわかりやすく描かれています。ほじめて星空に親しむお子さんから、大人まで、宇宙のしくみの基本が、楽しく理解できます。
出版社からのコメント
昔ながらの方法で結ばれた星座は、その名のイメージとかけ離れたものも多く、ピンとこなかった経験がある方も多いと思います。おおぐま座、うしかい座……この本の星座は、H.A.レイさんが考えだした、独自の線で結ばれているため、名前と形がぴたっとつながります。
また、星座の話にとどまらず、星に名前や明るさの違いがあることや、宇宙の広がりについて、惑星についてなども、わかりやすく掘りさげています。
1969年の初版、手持ちの絵本は2006年で73刷です。
本当に長く読まれ続けている絵本です。
絵本といっても72頁というボリューム。
「福音館の科学の本」は読書対象者が、
小学校中級からおとなまで、とあるように
幅広い年代に面白くまたわかり易く書かれています。
作者は「ひとまねこざるシリーズ」のH.Aレイです。
ゆかいなジョージのおはなしとは違って、詳しく丁寧な解説。
ページの隅に小さなこどもたちがページをめくる案内をしてくれます。
彼らがつぶやくセリフがこちらの気持ちと重なります。
北斗七星にはじまり全天星図まで、星空を楽しむ本です。
『カエルのバレエ入門』伝統、型、表現、筋肉
これはなんといっても、カエルの優雅な姿を描いている
クリントン・アロウッドに拍手です。
カエルの真剣・大真面目な表情と
華麗なポーズが最高にキュートな絵本です。
カエルのバレエ入門
ドナルド・エリオット 文
クリントン・アロウッド 絵
出版社: 岩波書店
出版年: 1983年3月
黒一色で描かれた絵は、とにかく線が細い。
極細密線画。
黒くみえる部分もベタでぬらず、線を書き込んでいます。
冒頭に「はしがき はじめに」があり
おわりに「ちょっとまじめな解説」がありますが、
それ以外の目次は、
第1部 ポジションと動き
五つの基本ポジション
第1ポジション 第2ポジション 第3ポジション 第4ポジション 第5ポジション
バーおよびセンターでおこなうポーズとパ
プリエ アントルシャ グラン・ジェテ パ・ド・シャ カブリオール パ・バロネ アティチュード
アラベスク デヴロッペ
パ・ド・ドゥ
ピルエット アラベスク・パンシェ グラン・ジュッテ プティ・バットマン アティチュード
バ・ポワソン
第2部 カエルのバレエ団
終幕のあいさつーブラヴォー! プリマ・バレリーナ
基本、右ページにカエルのポーズの絵があり、左ページにポーズの解説が書かれています。
右ページの絵の下に書かれた文のおかしいこと。
例えば、
第1のポジション あほづらはおまけです
第3のポジション …できるだけ肥らないようにしなくてはいけません
プリエ こればかりということはないにしても、熱心に練習しましょう
パ・ド・シャ 人生でできるだけ大きな音をたてずにおりることを心がけてはどうでしょうか
カブリオール …軽い、いたずらっぽい、かわいい動き
アティチュード ある感情や態度を表現する
アラベスク・パンシェ おたがいの信頼と調和がなければいけません
なんとも、言い得て妙、本当に。
最近、バレエの世界コンクールで日本人が多く受賞するニュースを嬉しく聞いています。
身体の芸術的表現は日本人には、向いているのでしょう。もちろん内的表現も。
繊細緻密な表現力を必要とする、芸能(能、狂言、歌舞伎)が日本には多くあります。
型を身につける素養もあるように思います。
バレエには、音楽と物語と舞台美術と衣装とスタイルとがあり、
その優雅さに憧れ、
10代はバレエ漫画(アラベスク、SUWAN)に夢中、
20代はバレエ公演を観まくり、
30代は数か月バレエレッスンに通い、
40代は映像鑑賞専門
50〜60代はYouTubeそして再び舞台鑑賞
40代にこの絵本でバレエへのワクワク感を思い出したのでした。
最後になぜカエルか。
『つきのぼうや』カタチで楽しむおはなし
『ほしになったりゅうのきば』七夕の夜に読みたい絵本
赤羽末吉さんの迫力ある絵が魅力的な大型の絵本。
『ちびくろさんぼのおはなし』こんなことがあったらおもしろい
『川はながれる』はじまりを考えてみる
『ふわふわしっぽと金のくつ』異国の行事をたのしむ
『ムーン・ジャンパー』だれもがこんなふうにしてみたくなる
なんとも、しっとりとした空気が感じられる絵本です。
ただただ生きる喜びを感じられる、そんな絵本です。
『海べのあさ』世界は輝いていると知る
『ぼくはきみできみはぼく』子どもの目線を知りたい時に読む絵本
この絵本に描かれる子どもたちのなんと楽しげなこと。
上記は、大地の芸術祭の作品「チョマノモリ」はこの絵本とイメージが重なります
『すばらしいとき』自然を体感する素晴らしさ
「名馬キャリコ』活劇でスカッと爽快になる
はじめてこの絵本をみたとき、
まるで映画のよう、と思いました。
バージニア・リー・バートン 作
せたていじ 訳
出版社: 岩波書店
出版年: 1979年11月
ところははるか、西部のサボテン州に、その名をキャリコとよぶ名馬がおりました。みめ美しくはありませんが、あたまはめっぽうきれましたし、足のはやさは、とびきりでした。
とはじまります。
おはなしは痛快な勧善懲悪ストーリー。
牛を盗み出して、捕まって牢屋行、脱獄して、また悪さを働きますが、
キャリコの活躍で事なきを得、悪さはすまいと回心するスチンカー。
あれよあれよとおはなしは二転三転、
悪党のすごみやスチンカー一味が憎めないキャラクターですし、
最後は心を入れかえて、大団円。
全58ページ、1ページに正方形2コマか1コマの長方形に、
小気味よく絵が続きます。
全てモノクロというのも、モノクロ映画を観ているようです。
絵が黒の単色に対し、背景の色はどんどん変わります。
黄土色、肌色、灰緑、橙色、グレーピンク、鮮やかピンク、若草色、明るい黄土色、
どの色もシックな感じです。
リズミカルな動き、馬の躍動感、雲や雨、土煙などデザインが洗練されており、
風景の奥行や距離感が見事、登場人物がいきいき動いている絵本です。
本のサイズも小さ目、天地16.5㎝、幅20.5㎝ほど。
本は小さい方が集中してできるものです。
前後の見返しに全ページがフィルムのようにならんでいます。
扉が映画のタイトルのようですし、余分なものが一切ない装丁が清清しい。
おはなしも絵も、スカッと爽快な気分を味わえる1冊です。
『うさぎのみみはなぜながい』何事も理由を考えてみる
これは、メキシコがまだナオワの国といった時代の、
おおむかしの物語です。
そのころすんでいたメキシコ人は、みな、わたくしたち日本人そっくりの人たちで、
アステカ文化という、たいそう高い文化をもっていました。
うさぎのみみはなぜながい
北川民次 作
出版社: 福音館書店
出版年: 1982年7月
中表紙に上記のような、まえがきがあります。
作者の北川民次はメキシコに暮らして絵を描いてきた人です。
絵本の題名どおり、うさぎのみみが、なぜ、長くなったのかを
物語っています。
うさぎは山の神さまのところへでかけ、お願いします。
ちっぽけなからだしか授けてもらえなかったために、
もりの仲間にいじめられ、ころされてしまう、
もっとからだを大きくしてください、と。
神さまは、
「よし。では、おまえがとらと、わにと、さるとを、じぶんの てで ころして、
その かわを もってきたら、おまえの ねがいを かなえてやろう」といわれました。
無理難題に途方にくれながらも、うさぎは森へ出かけて行きます。
そして勇気と知恵で、見事その難題にこたえたのです。
「かみさま。おおせのとおり、とらと、わにと、さるとを、わたしじしんの てで ころして、
かわを とって もってまいりました。
かみさま。どうぞ はじめの おやくそくどおり、わたくしを もりの なかで いちばん おおきな けものに してください」
かみさまは しばたくのあいだ、だまって じっと、このちっぽけな うさぎを みつめておられました。それからしずかに こういわれたのです。
神さまは、うさぎのことをちいさくこしらえたが、すばっしっこく利口に作ってやった。
だから三匹に勝つことができたのだと。
この上、大きなからだをさずけたら森中のけものを殺してしまうに違いない。
だから願いを聞き届けるわけにいかない。
「~しかし、せめてひととこだけでも、おおきくしてやろう」
そうして、神さまはうさぎの両方の耳をつかんで遠い遠い大地の上を投げ出されました。
そのときから、うさぎのみみは あのように おおきく ながく なったのです。
最後のページは、耳の長くなったうさぎのやさしげな姿。
それまでのうさぎの姿は、ちょっと怖い・・・
三匹に勝つために戦闘モードだったのでしょう。
絵は黄色がベースとなって茶色、濃いグレーの4色使い。
カラーとモノクロが交互に現れる絵本によく使われる様式。
森の木々や様子、動物が異国を感じさせる造形です。
神さまの裁量はいかが。
うさぎは長くなった耳を気にいったのでしょうか。